「かしこいクルマの使い方」講座vol.7
クルマのちょっと怖いはなし
東京工業大学教授 藤井聡(ふじい・さとし)

例えば、クルマと飛行機どっちを利用している時が「怖い」ですか?自動車事故と地震、どっちが怖いですか?おそらく,クルマよりも飛行機や地震の方が怖いのではないでしょうか。

 しか し、自動車事故で亡くなる方は年間1万人近くもいます。これは阪神・淡路大震災のそれよりも、そしてこれまで国内で起こった飛行機事故全てを足し合わせた死者数よりもずっと大きなものです。つまりクルマの方が命を落とすリスクが高いにも関わらず、あま り怖いとは思われていないのです。

 これにはいくつかの理由があります。一回あたりの被害が地震や飛行機の方が大きいこと、地震や飛行機の事故と違って、クルマの事故はある程度自分で避けられること等ですが、その中でも特に重要なものとして、「クルマが便利だから」という理由があります。

 私たちはついつい、自分にとって都合のよいように考えてしてしまいがちです。例えば、喫煙者が「タバコは健康に害はない」と過度に考えてしまったり、賭け事をしていて負けが込んできたら「次は絶対に勝つに違いない」と考えてしまったり―――。

 そういうものの一つに、「便利なものは安全だ」と思ってしまう心理があります。例えば、あるアンケート調査では、「クルマよく使う人は、あまり使わない人よりも2倍以上クルマが安全だと考えている」という結果になりました。でも、ホントは、クルマをよく使う人の方が、事故の危険はずっと高いはずなのですが...。

 クルマが便利だからこそ安全と考える。でもこれは勘違い。事故死する運転者数から、平均的ドライバーが一生涯で死亡事故にあう確率を求めるとその数値はなんと 「約350人に1人」となります。便利であってもリスクはリスク。クルマとかしこくお付き合いするには、こうしたリスクをきちんと知っておくことも大切なことかも知れませんね。


<ふじい・さとし> 東京工業大学 教授.1968年奈良県生、京都大学 卒業.フジテレビ 「交通バラエティ・日本の歩き方」2003〜2004年を監修・出演.JAFMATE「交通百葉箱」2001〜2002年に連載.主著「社会的ジレンマの処方箋」
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