「かしこいクルマの使い方」講座vol.5
「外気」に出る人,出ない人
東京工業大学教授 藤井聡(ふじい・さとし)

皆さんは,今日どれだけ「外気」に触れたでしょうか?

 朝起きれば部屋の中ですし,お店やレストランに入れば建物の中で,オフィスもビルの中でしょう.そう考えると,「外気」に触れたのは,昼食や買い物に出かけると きではなかったでしょうか.

 おそら く,歩いている時はずっと「外気」に触れていたことでしょう.バスや電車では,少し「外気」から隔てられています。ただし,駅やバス停で待ち合わせをして いる時には「外気」に触れていたでしょうし,駅やバス停に向かうときには,徒歩や自転車で「外気」に触れていたことでしょう.

 でも, 「クルマ」を使っているときはどうだったでしょうか.

 もちろん,窓をあけていれば,風は入ってくるかも知れません.でも,それは「外気」というよりはむしろ「強風」といった方がいいかも知れません.ましてや,窓を閉めてエアコンを入れていれば,そこには「外気」はありません.もちろん,クルマを降りればそこには「外気」がありますが,家やコンビニやレストランでク ルマを降りても,歩くのはせいぜい数十秒程度しかないことが多いのではないでしょうか。

 そうなのです.クルマを使っている限り,私たちは,ほとんど「外気」に触れることが無くなってしまうのです.

 「外気」の中には,ひょっとしたら草や花のにおいがあるかも知れません.虫や鳥の声が,聞くともなしに聞こえてくるかも知れません.よく見れば,そこには小さ な花がいくつか咲いているかもしれません.

 もちろん,私たちは,季節なんて何も感じなくても,ご飯も食べれますし,仕事も買い物もできるし,映画もテレビも楽しめます.でももし,それだけでは何となくわびしいような,物足りないような感じがあるとするなら――.ごくごく当たり前の道を,今まであまり歩いたことの無い道を,ゆっくりと歩いてみるのも,わるい事ではないのかもしれませんね.


<ふじい・さとし> 東京工業大学 教授.1968年奈良県生、京都大学 卒業.フジテレビ 「交通バラエティ・日本の歩き方」2003〜2004年を監修・出演.JAFMATE「交通百葉箱」2001〜2002年に連載.主著「社会的ジレンマの処方箋」
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